すぐ役に立たなくなるもの 2007年05月05日

 

 かつてマゼランが世界一周に要した日数は約1100日であった。現代ではジェット機なら40時間ほどで世界を一周できる。もしインターネットを使えば、一瞬のうちに情報を地球の裏側まで届けることができる。こうした時代の流れを受けて、私たちは、無意識のうちに「速いことはいいことだ」という価値観を当然のように思っている。しかし、果たしてそうか。

 「より速く」が尊ばれるのは旅行や情報の世界に限らない。無駄を削り、回り道をせず、いかに速く目的地に着くか。こうした価値観が時には人生の最大の目標になることもあるから怖い。

 勉強も同じである。最小の労力で最大の効果を上げるために、受験科目でない科目を捨てたりする。それが組織ぐるみで行われたのが、昨年(2006年)問題となった世界史や情報といった必修科目の未履修問題である。

 しかし、高校の授業でいらない科目など本来無い。教養とは無駄の塊といってもいい。その無駄がいつか役に立つときが来る。高校時代は、いろんなことに知的好奇心を持ち、無駄をいっぱい身につけてほしい。すぐ役に立つものはすぐ役に立たなくなる。パソコンのソフトなどはその典型である。

 人生、時にはわざと遠回りをする余裕も大事だと思うのだが、どうだろうか。

 

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